【書籍レビュー】『今日もひとり、ディズニーランドで』
皆さんこんにちは。はるみです。
人生初の書籍レビューに挑戦しました。
といってもまだまだ至らないところだらけです。温かい目でご覧ください。
記念すべき1回目となる今回、紹介するのはこちらの作品です。
ワクサカソウヘイさんの『今日もひとり、ディズニーランドで』です。
それではいってみましょう。
【基本情報】
作者:ワクサカソウヘイ
出版社:幻冬舎文庫
価格:540円+税
発売日:2018/8/5
作者であるワクサカソウヘイさんは1983年生まれ。
小説やコラム、コントの脚本など幅広いジャンルにおいて活躍している文筆家さんです。
主な著書として『中学生はコーヒー牛乳でテンション上がる』(情報センター出版局)などがあります。
今作は作者の初の書き下ろし小説であり、事実に基づいた限りなくノンフィクションに近い作品だそうです。
いったいどんな作品なのでしょうか。
【作品の概要】
【あらすじ】
就活もせずに毎日家で「目玉のおやじのモノマネ」をしたり、親の食事を無視して卵かけご飯を食べたりしながら自堕落な生活をしている23歳の「僕」は、
ある日父に言われた「何か行動しろ」という言葉を受け、なけなしの貯金を崩して一人でディズニーランドに行くことを決める。
「僕」はアドベンチャーランドで自分の生活に落胆したり、ホーンテッドマンションで自分は幽霊なのではと謎の錯覚を起こしたりしながら自分の黒歴史だらけの人生を振り返る。そして次第にディズニーの魅力に引き込まれていく。
そんな特殊な生活がある日、父の逆鱗に触れて・・・?
【登場人物】
物語の主な登場人物は2人です。
①「僕」
23歳、無職。夜間学校を卒業してからまともに就職活動をしていない絶賛ニート。
しょっちゅう職務質問をされるような見た目をしており、父からは「幽霊みたい」と言われる。
語彙力と想像力が多彩だが、そのせいで人生は黒歴史まみれになっている。
②父
息子の将来を常に心配しており、息子に対して口うるさく注意している。
そのせいで親子仲は悪い。
この2人以外にも何人か出てきます。ただこの物語の重要人物となるのはこの2人でしょう。
それではこれを踏まえて、感想と特徴をまとめていきます。
【感想と特徴】
ディズニー描写がアツい!!
皆さんはディズニーランドと言ったらどんなアトラクションを思い浮かべますか?
この作品はディズニー好きの作者によるアトラクションの解説と共に物語が進んでいきます。
ホーンテッドマンション、イッツアスモールワールドなど人気アトラクションはもちろんのこと、「スイスファミリー・ツリーハウス」のような穴場アトラクションまで、丁寧な解説がついています。
これはディズニー好きにはたまらないですよね。
私はそこまでディズニーに詳しくないので、聞いたことのない、行ったことのないアトラクションはその都度ネットで写真を見ながら読みました。
そして主人公はそのアトラクションに皮肉を交えたり、毒づいてみたり、ちょっと特殊な感性でディズニーを自分なりに楽しんでいきます。
特に私が気に入っているのは「白雪姫と7人の小人」でのワンシーン。
このアトラクション、白雪姫と言いつつ、とっても怖いことで有名です。
華やかなアトラクションだと勘違いしていた主人公はそのおどろおどろしさに衝撃を受けます。
そして白雪姫のコスプレをした女の子が泣いているのを見つけます。
実は私も4,5歳のころこのアトラクションに乗って大泣きしたことがあります。
このシーンは驚きました。
ひょっとして、このシーンのモデルは私なのでは?なんて考えてしまいました。
ウザくも愛に溢れた主人公!
この主人公、先ほども書きましたが語彙力と想像力に長けています。
しかしそのせいで、彼の人生はそこそこハチャメチャなわけです。
小学生の時には、劇で白雪姫とキスをする王子役をやりたいがために「口吸いがしたい」などという衝撃な一言をクラス全員の前で言い放ちます。
なかなかやばいやつです。
個人的に合コンに対する妄想でドン引きしました。
他にも主人公のやばすぎ黒歴史はたくさんあります。それはぜひ手に取ってみてから確かめてください。
そしてこの本の面白いところはこの黒歴史を主人公が盛大に自虐するところ。
アトラクションの雰囲気に沿って、自分の人生を面白おかしく振り返ります。
なんだそれ!と笑えるものや「お前大丈夫か・・・?」と本気で心配してしまうものなど、様々です。
さてさて、ここまでは面白い所、笑えるところを中心に書いてきましたが、私が一番お伝えしたいのはここからです。
温かい家族愛、主人公の帰る場所
主人公は春、夏とディズニーに通いつめ、貯金が底をつき始めます。
そのころ、そんな生活が父の逆鱗に触れ、「家を出ていけ」と言われてしまうのです。
そこから主人公の「最後のディズニーランド」が始まります。
今までは主人公の黒歴史が暴露され続けてきました。
しかしここからは雰囲気ががらりと変わります。
「家族」
これが本作のキーワードと言っていいでしょう。
家族とは言いつつも、結局父や母は自分ではない人物、他人ということになります。
そんな他人を前にしてどういう態度で接するか、不安定な家族というグループの中で自分がどのように生きていくか。それがとても大切になってきます。
ディズニーランドも、ハイテクな未来感が漂う空間があったり、山が連なる荒々しい空間があったり、バラバラなわけです。
それでも、ディズニーランドという家族として、今日もキャストを笑顔にしています。
父と主人公のすれ違いに心が締め付けられる場面もありましたが、ラストはディズニーの情景も相まって非常に美しいものでした。
「目の前の他者を受け入れる、敬意の態度。言葉がなくても、それは示すことができるんだ」(本文p215より引用)
これはミッキーを前に主人公が考えた言葉です。
言葉を発さないミッキーの愛に包まれた主人公は、本当に自分がいるべき場所はどこなのか、自分なりに考えていくわけです。
この作品で一番思ったことはディズニーに行きたい!ではなく、
「家に帰りたい」でした。
それでは、まとめです。
【まとめ】
この作品をお勧めしたいのは次のような人。
・ディズニーランドが好きな人
・絶賛反抗期中の学生
・優しい気持ちに包まれたい人
・自分の黒歴史を払拭したい人
本編の後にアトラクションごとの注釈があるので全くディズニーランドを知らない人でも楽しめると思います。
230ページと比較的短く、気軽に読めるのもいいところですね。
そして過去の黒歴史でつらい思いをしている人もぜひ読んでみてください。
大丈夫です。この作品の主人公ほどやばい人はそうそういません。(笑)
ディズニーランドの温かい幸せな雰囲気に包まれながら、自分と家族の在り方について、もう一度考えてみてはいかがでしょうか。
以上、ワクサカソウヘイ『今日もひとり、ディズニーランドで』のレビューでした。
また面白いと思った作品がありましたら、こうして記事にしてみようと思います。
それでは、楽しい読書ライフを。
【おまけ】
ここでは自分の中のお気に入りフレーズを毎回一つ、書いておきます。
読んだ方、探してみてください。
どんな人間も主役か脇役かに選別などすることはできない。
人は誰かにとっての主役であり、また誰かにとっての脇役である。